ラベンダー荘(失くしたものが見つかる場所)
「優子さん、大丈夫?」

 私は、突然、静寂を破って聞こえてきた康孝の言葉でわれに返った。

「だいじょうぶです。ちょっと、ぼぅーっとしちゃって」

 康孝と私は最後尾を並んで歩いている。

 月明かりとわずかな街灯を頼りに、前を行くかおりたちについていく。

「さすがの俺も少し疲れたな」

「康孝さんが?」

「俺にはやっぱり一人旅があってる」

 康孝が私を見下ろす。

「本当にぼぅーっとしてるね。」

「わたし、なんだか分かりそう。」

「おや。それはもしかして、ラベンダー荘の謎かな?」

 康孝が興味深そうに言った。

「なぞ、なのかな?なんか、ここまで出掛かってるんだけど」

 康孝は私の表現に、楽しそうに笑いながら口を開く。

「まあ、そんなにあせらなくても大丈夫だよ。君は三ヶ月と決めてここに来たらしいね。それならまだ一ヶ月あるから」

 私は一人取り残されたような気になる。

「だって、信也くんもアキラも、ラベンダー荘からいなくなっちゃいそうな気がして」

「信也はいなくなるかもな」

 康孝は私だけに聞こえるように話していく。

「心配はいらないよ。優子さんも今までのようにラベンダー荘で過ごしていたら、きっとあるとき、ふと答えが見つかるから」

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