保育士は超アイドル!〜恋していいですか?〜
少しずつ離れて行く花畑 蜜の両手。
何となく離したくないような感じさえするほど、ゆっくりと。


「僕はここが好きです。夢でいっぱいのこの場所が。柚先生と同じように」


柚は何か言いたいのに、体を優しい糸が緩く縛っているかのように何も言えず動くことさえ出来ない。
今、自分がいる場所が職場である事も忘れてしまっている。
花畑 蜜はふと周りの先生の机を見た。
どの机にもピンクの可愛いコスモスの一輪挿しが揺れている。
柚が、みんなの気持ちが和むようにと生けた花。
そして、柚の机の隅に置かれている分厚い辞書を見た。
そこには四つ葉のクローバーが押し花にされている最中だ。
柚は園庭や、色んな所に行って四つ葉のクローバーを探している。
そしてそれを押し花にして、お友達に優しくしてあげた園児にご褒美としてこっそりあげていた。
柚のそんな優しさに触れる度、花畑 蜜は普段の忙しさの中で忘れていた何かを取り戻して行くような気がしていた。
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