どうしようもなく好きな人
コンコン。
「はいはーい、空いてますよー」
中から、いつもののんびりした声が聞こえてきて、少し緊張した。
ドキドキしながら、ゆっくりとドアを開ける。
「こんにちは」
「はい、こんにちは」
その人が振り返る。
眼鏡をかけた優しそうな笑顔を、こちらに向けてくれた。
「あれ? 今日は早いじゃん」
「あ、えっと、授業が早く終わったので」
「へー、そうなんだ」
「先輩も早いですね」
「まぁねー」
対して興味なさそうな様子だけど、それでも話せた事が嬉しくて、私は照れ隠しで少し視線をずらした。