君のオレンジ〜あの日、あの教室で〜
「…じゃあ、また明日な」
「うん、また明日」
今日も家まで送ってもらった。
デートは…
私のせいで台無しになっちゃったな。
どうして
いつも失敗するのかな。
「…はぁ」
ため息をつきながら
家のドアに手をかけた。
「……ち、ちさ…?」
体が、ピタッと止まった。
小さな声だったけど
確かに聞こえた。
私を『ちさ』って呼ぶ声が。
私のことを『ちさ』って呼ぶ人は
1人しかいない。
その声はずっと前から聞きなれていて
でも、低くて
でも…
私の好きな声だった。
その声はきっと
隣の家から聞こえたのだろう。