Roman
江戸時代ぐらいの日本と中世時期のヨーロッパ。
Romanを一言で表すとしたら、この言葉が一番しっくりとくるだろう。
「此処がRoman…」
「はい。玄様方のいらした世界と大変類似しているでしょう?」
「ああ、…でも」
外の景色も建物や街灯の造りが違う程度。晴れ渡った空には鳥が羽ばたき、道端には花々が咲き誇る。空気だって、大自然の中心にいるかのように澄んでいる。
しかし感じるのは、とてつもない違和感。Romanと俺がいた世界では一つ決定的な違いがあった。
「人がいないじゃないか」
こんなに良い散歩日和だというのに、人が―――人の気配がしない。
不意にぞくりと寒気が奔る。どうやら身震いをしたらしい。
「Romanの人々は大抵、日光を嫌っております。ですから、こちらではこれが普通なんですよ」
「哀しいことだな」
「文化の違いです」
空に昇る太陽。優しくとても暖かいものだというのに。これを嫌うということは、人生における重大な幸せを逃してしまっているんじゃないかと、玄は眉を顰めた。
「性に合わない」
「こちらの民でないですから、当たり前でしょう」
「じゃあ、白燈は?」
「私もこの光りはあまり好きではありませんね。すみませんが、多少急ぎますよ」
白燈はさらりと玄の言葉を受け流し、早足で進み出した。