Roman
「驚かせてしまい申し訳ございません」
「……あんた、誰?」
「申し遅れました。私、案内人の白燈(ハクトウ)と申します。以後お見知り置きを」
悠長に礼をして、男―――白燈が名乗る。その丁寧さや醸し出す雰囲気から悪い奴ではなさそうだ、と玄は察した。
「案内人って…此処は学校じゃないか」
「はい、学校ですね」
「……だったら何をしに」
「案内をするためですよ、玄様」
びくりと心臓が跳ねる。
「…俺の名前を知っているのか」
「勿論。何せ私は、貴方様をあちらに案内するために此処に来たのですから」
「俺、を?」
白燈はこくりと頷き、玄の前に手を差し出す。
「貴方様のお姉様、沙耶様に命ぜられました。私白燈が幻想と夢想の世界――Romanへご案内させていただきましょう」