Pair key 〜繋がった2つの愛〜
plus±minus
離さないで――
側にいて、抱きしめて―――
*side 愛音*
「わたしね、俊哉さんが持つ鍵の束の一つにすぎないんじゃ……って思ってました」
「鍵の束?」
「そう。いっぱいある鍵と役割は同じで、必要な時にだけ呼ばれる存在——スペアが充実してるから、いつか捨てられちゃうんだろうなって……ごめんね?」
「呆れた被害妄想だな……」
「でも……半分くらいは、きっと俊哉さんが悪いんだよ?」
「それは聞き捨てならん妄言だ」
「だぁって俊哉さんがもうチョット分かり易くて優しい人だったら、わたしだってこんなに疑心暗鬼に駆られることもなかったろうし……普段はズケズケ容赦ないくせに、肝心な所で言葉が足りないんですよ松元さんは!」
「私のどこが優しくないと言うのだ……理解できないお前が悪い。だいたい、私がこれまでどれだけお前のことで無駄な時間と労力を……っ」
「わかった!わかったから……もうッ!!」
そう言ってわたしは彼の口を両手で塞いだ。
わたしを非難するこの口が、甘く愛を囁くことなど、天地がひっくり返っても無いのかもしれない。
それでもわたしはこの人の、態度から、視線から、目には見えない気遣いや、憎まれ口や嘘の中から……
沢山の施しを受けていることに気付くべきだった。
そしてそこに愛を感じるべきだったのだろう。
(この人は、そういう人だから・・・)
とうの昔に知ってたハズのことを、今ごろになって再確認したりして……わたしは正真正銘の馬鹿娘かもしれない。
それでも俊哉さんは、そんなわたしを好きでいてくれてるんだ……わざわざ口に出したくは無い、自分の胸の内を暗示させるような説明をしてくれるくらいに……
わたしはホントに鈍感で、男女の機敏にも疎いから、なかなか気付けないんだけど……
そもそもの根底には好意と厚意が根強く在って、忘れられないあの時のセリフが今でもちゃんと生きてるんだと、そう思えば——分かりにくい俊哉さんの愛情表現も、気遣いも、これからはきっと目に見えて、自信と確信を持てる気がした。