Pair key 〜繋がった2つの愛〜
なんとも奇妙な体勢のわたし。
腰と肩と頭を固定されて動けない……それはまるで打ち付けられた藁人形のようであり、標本のためにピン留めされた昆虫のようだと思った。
でも、どちらもきっと正しくない。
呪いとか、鑑賞品とかを望む彼じゃないから……
彼みたいな人には必要ない。
必要なのは、もっとリアルなものだと思う。
現実的で、不要なものをあっという間に見極めて、切り捨てる……
そんな日々を送る彼の望みとは、一体どんなものだろう?
どんな時に、至福や安らぎを感じているのだろう?
わたしは俊哉さんの抱く恋愛感情だけでなく、深層心理みたいなものを、知りたいと思った。
指標というか、生き甲斐というか……生きてゆくことの意味みたいなものを、彼がどこに感じているのか、どんな時にそれが満たされているのか……
それを知ることができたなら、わたしは……
……わたしに何ができるだろう――
目を瞑り、そんなことを考えながら彼を思い、彼に身を任せ、されるがままになっているわたし。
身体は時々ビクリと反射を示したり、しならせたりしながら、小さな傷を増やしてる。
じわじわと広がっていく痛みが、なぜか俊哉さんの痛みに思えた。
もしかして……
わたしは彼を怒らせたのではなく、傷つけてしまったのではないだろうか――
妙に勘が冴えていて、根拠はないのに確信めいたものがあった。
それなら彼に謝りたい。
だけど、何が原因なのかまでは分からない……
さっき思い描いたような、単純な理由じゃ無いことだけは確かだ——
だとしたら、わたしの取るべき行動は、このまま彼に身を任せることじゃないのかな?
そうすることで、彼の想いを汲み取る努力をしたいと思った。
(なにがいけなかったんだろう?どうして傷ついてしまったのだろう?どうすれば解決できるんだろう?)
とにかく今はただ、彼の気が収まるまで好きにさせたかった。ううん、わたしがそうして欲しかった。
痛くてもいい。もしも俊哉さんがそうする事で、少しでも気が晴れたりするんだったら貢献したいし……何かを訴えようとしてるんだったら、わたしはそれを受け止めたい……だから、このままでいい。
我ながらおかしな感情だと思った。
普通だったら……普段のわたしだったら、痛いことは大嫌いだし、無言なのも嫌だし、相手の顔が見えないことに不満や不安を覚えるハズなのに――
なのに……今は違う。
全然違う、なにかが違う。
わたしは耐えているのではなく、全身で俊哉さんを感じているのだと思った――