Pair key 〜繋がった2つの愛〜
「いま、鬱陶しいって、思ったでしょ?」
「ああ。思ったが、悪いか?」
「鬱陶しい、面倒くさい、一緒にいるのが煩わしい……そう思ったの?」
「まあそうだな、概ね正しい推量だ。お前にしては珍しく――」
鋭い推察だったな、と……言ってやるつもりで振り向いて驚く。
そこには、うっすらと目に涙を浮かべて、唇を噛みしめている愛音がいた。
「ど、どうした?」
「………ごめんなさい」
「何を謝る必要がある?」
「……ごめん……ごめんね?」
ぽろぽろと泣き出した愛音を、どうしたものかと見ていると……「同情して付き合ってくれなくてもいいよ」などと言うものだから、ほとほと呆れて言葉も出ない。
本当に、思い込みの激しい馬鹿な娘だと思った。
なぜこの私が、同情で付き合わなければならんのだ……
なぜそんな、なんの得にもならないことに、私の貴重な時間と身体を割かねばならんのだ……
馬鹿もここまでくると神業だなと、思ったりもした。
実に面倒くさい娘だ。
だが、それがまた非常に愛しくもあるから手に負えない……
思い立ったら最後、どこまでも真っ直ぐに突き進む考え方や行動が、私には到底できないことなだけに……その美徳を、可能性もろとも大事にしたいなどと思ってしまう。
(柄にもないことを……)
これから言わねばならないのか。実に面倒くさい……
それでもこのまま愛音を放っておくことはできない自分。
惚れた弱みというやつか……とにかく私は、愛音の誤解を解くために、基本から教え込まねばならないようだ。
(全くもって、厄介な……面白い女だ、おまえという奴は……)