Pair key 〜繋がった2つの愛〜
2. 欲望編
鍵の在り処
*side 愛音*
絶対に泣いたりしないって、ついさっき決めたばかりなのに……松元さんの一言でわたしは呆気ないほど簡単に絶望し、そのことで胸がいっぱいになってしまう。
予想していた結末とはいえ、涙が滲みだすことに抗うこともできず……ポツリと一粒、溢れたら止まらなくなって、ポロポロと次から次へとしずくが零れ落ちた。
迎えてしまったバッドエンドが悲しくて、悲しくて……
彼と目を合わせているのも辛くなって、わたしはだんだんと目線を下ろしながら、ソファにうずくまるようにして抱えたクッションに視線を預けた。
はぁ……と、溜め息が隣から聞こえる。
ヤレヤレ、やっと気付いたのか?と言いたげな、疲れたような溜め息。
わたしはグッと力を入れて身構えて、松元さんから発せられるであろう辛辣な言葉を待った。
「いいか、よく聞け……」
「……はい」
「私が鬱陶しいと言ったのは、お前が分かりきった質問をしてよこした、その点に関してのみだ……常日頃お前を煩わしいなどとは思っていない。
そもそも、一緒にいるのが苦痛な相手と、こうして共に過ごす必要性がどこにある。私がお前と過ごすのは、それが自然だからであろう……違うか?」
「……え…ええっっと……?」
「分からん奴だな……お前は私と居てどう思う?共に居たいからこそ、こうして側にいるのではないのか?だとしたら当然、それは私にも当てはまることであろうが」
「…………」
「これ以上簡単には言えん、いい加減に悟れ……馬鹿者」
(ん?ん?ん?つまり?……松元さんは、わたしと一緒に過ごしたいと思ってくれてるってこと?)
「で、でも松元さん、わたしと居ても楽しくないって……」
「楽しくないなどとは一言も言っていない。だいだい常に楽しい状態を望む方がどうかしている……お前は自分が悲しい気分の時や滅入っている時は、私とは会いたくないと思っているのか?例えば私が仕事で困難な状態にあった時には、近寄り難いと感じるのか?」
「え……あ、そっか……」
「全く、どれも分かりきったことばかりだ。それをお前は——」
「あれ?じゃあ松元さんって、わたしのこと好きなの?」
「……嫌いな奴と、こうして此処にいる訳がないだろう。こんな面倒な馬鹿娘に、懇切丁寧、一から教えてやっているのは何故だ?」
「好き……だから?」
「それぐらい自分で考えろ」
「教えてくれたっていいのに……」
「たったいま教えてやったばかりだろうが!」
「松元さん……分かりにくいよ、相変わらず……」
「ふんっ、なにを今更」
「あ、自覚あったんですね」
「…………」
すっかり涙は吹き飛んで、わたしは舞い上がりそうなくらい軽やかな気分で……ジッと松元さんを見つめてみる。
さっきまでわたしを見据えていた目が、ふっと逸れて横を向く。
何だかそれが、松元さんの照れ隠しに見えた——
絶対に泣いたりしないって、ついさっき決めたばかりなのに……松元さんの一言でわたしは呆気ないほど簡単に絶望し、そのことで胸がいっぱいになってしまう。
予想していた結末とはいえ、涙が滲みだすことに抗うこともできず……ポツリと一粒、溢れたら止まらなくなって、ポロポロと次から次へとしずくが零れ落ちた。
迎えてしまったバッドエンドが悲しくて、悲しくて……
彼と目を合わせているのも辛くなって、わたしはだんだんと目線を下ろしながら、ソファにうずくまるようにして抱えたクッションに視線を預けた。
はぁ……と、溜め息が隣から聞こえる。
ヤレヤレ、やっと気付いたのか?と言いたげな、疲れたような溜め息。
わたしはグッと力を入れて身構えて、松元さんから発せられるであろう辛辣な言葉を待った。
「いいか、よく聞け……」
「……はい」
「私が鬱陶しいと言ったのは、お前が分かりきった質問をしてよこした、その点に関してのみだ……常日頃お前を煩わしいなどとは思っていない。
そもそも、一緒にいるのが苦痛な相手と、こうして共に過ごす必要性がどこにある。私がお前と過ごすのは、それが自然だからであろう……違うか?」
「……え…ええっっと……?」
「分からん奴だな……お前は私と居てどう思う?共に居たいからこそ、こうして側にいるのではないのか?だとしたら当然、それは私にも当てはまることであろうが」
「…………」
「これ以上簡単には言えん、いい加減に悟れ……馬鹿者」
(ん?ん?ん?つまり?……松元さんは、わたしと一緒に過ごしたいと思ってくれてるってこと?)
「で、でも松元さん、わたしと居ても楽しくないって……」
「楽しくないなどとは一言も言っていない。だいだい常に楽しい状態を望む方がどうかしている……お前は自分が悲しい気分の時や滅入っている時は、私とは会いたくないと思っているのか?例えば私が仕事で困難な状態にあった時には、近寄り難いと感じるのか?」
「え……あ、そっか……」
「全く、どれも分かりきったことばかりだ。それをお前は——」
「あれ?じゃあ松元さんって、わたしのこと好きなの?」
「……嫌いな奴と、こうして此処にいる訳がないだろう。こんな面倒な馬鹿娘に、懇切丁寧、一から教えてやっているのは何故だ?」
「好き……だから?」
「それぐらい自分で考えろ」
「教えてくれたっていいのに……」
「たったいま教えてやったばかりだろうが!」
「松元さん……分かりにくいよ、相変わらず……」
「ふんっ、なにを今更」
「あ、自覚あったんですね」
「…………」
すっかり涙は吹き飛んで、わたしは舞い上がりそうなくらい軽やかな気分で……ジッと松元さんを見つめてみる。
さっきまでわたしを見据えていた目が、ふっと逸れて横を向く。
何だかそれが、松元さんの照れ隠しに見えた——