星空は100年後
 ふあ、と大きな欠伸をして、今日の残りをどう過ごそうかと考えていると携帯電話が着信を知らせる。まだ寝ぼけ眼だったのが、表示された雅人の名前に一気に目が覚めた。

「はい!」
「あ、美輝? 今大丈夫?」
「うん、どうしたの?」

 雅人の声は、昨日よりも幾分元気に聞こえた。外にいるのか、背後からは車が通る音が聴こえてくる。

「今から帰るんだけど、そのくらいに美輝、家に来ないかなって。賢も部活終わったところらしいからあとで来ることになってるんだ」

 明るい声に、わたしの気分も上がる。元気よく「わかった」と返事をして通話を切った。

 病院からの帰りだろうけれど、落ち込んだ雰囲気がなかったということは、きっと町田さんがよくなっとのだろう。目が覚めたのかもしれない。

 今日はお母さんも帰りが遅いので、晩ごはんの用意はしないくていいと言っていた。わたしひとり分なら用意して出かけることもないだろう。

 だるい体を精一杯伸ばしてから、散らかったリビングを片付けてから服を着替えに行く。念のためお母さんにメッセージも送っておいた。



 用意を済ませて、少しだけ時間を弄んでから雅人の家に向かうために部屋を出る。

 雅人に一応確認のために、帰宅しているかどうかメッセージを送るとすぐに「家だよ」と返事が届いた。

「よ、美輝も今行くところか」

 階段を使って雅人の家がある二階に着くと、ちょうど一階から上がってきた賢と鉢合わせた。部活帰りとのことで、Tシャツにジャージというかなりラフな格好だ。随分汗をかいたのか、髪の毛が少し湿っている。

「なんか、すげえ疲れた顔してるな、美輝」
「そうかな?」

 別にこれといってなにもしていないんだけど。寝不足気味だったけれど、さっきだいぶ昼寝をしたし。問題がるとすれば、まだ腫れの引いていない目元だろうか。朝よりひどくはないけれど、まだ二重がおかしい。

 泣いていたことがバレるかも、と俯いた。

 泣いていた理由が、雅人を心配してだと、賢は思うかもしれない。

「人と話すときは目を見ろ」

 ふは、と笑いながら怒られて、頭をこつりと叩かれた。そしてちょっと乱暴にわたしの髪の毛を撫でて乱れさせる。雅人が頭を撫でる感じとは、全然違う。でも、その荒っぽい感じはなぜかちょっと安心感を与えてくれる。
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