星空は100年後
……こんな時間に、どこに?
全力で走り去っていく雅人の後ろ姿に、いやな予感がよぎる。
追いかけたい、雅人のそばに、いたい。だけど、それをしていいのかわからなくて、脚が動かない。
賢がポケットから携帯を出して、電話をかけた。多分、雅人に。だけど数秒後、なにも言わず電話を切って再びポケットになおす。連絡が取れなかったんだろう。
どうしよう、どうしよう。
戸惑っていると、賢がわたしの手をぎゅっと握りしめて無言で引っ張っていく。雅人の走り去っていった方向に。
「け、賢」
「そばに、いたいんだろ。行くぞ」
「……う、ん」
賢に引かれ、雅人のあとを追いかけた。バス停のある方向だ。けれど、姿はもう見えなくなっていた。バスに乗ったのか、たまたまやってきたタクシーに乗り込んだのかも、わからない。
心臓が早鐘をうち、苦しくなって賢の手をぎゅっと握りしめた。賢の手にも力が込められる。
「家、連絡しとけよ」
「う、ん」
携帯を取り出して、震える手でゆっくりとお母さんにメッセージを送った。
さっきまで真っ暗だと思っていたはずの空が、やけに明るいような気がして心がざわつく。