星空は100年後
　わたしは今、なにも出来ない。雅人のそばに駆け寄って抱きしめることも、慰めることも、涙を拭うこともできない。そばにいることさえ、できない。雅人がそれを望んでいないから。

　かといって、大好きな笑顔に戻すことも出来ない。

　わたしが雅人と一緒にいると涙を飲み込むように、雅人もわたしのそばでは必死に堪えてしまう。強がって歪んだ笑顔を顔に貼り付けてしまう。



　じゃあ、今のわたしにできることは。

　そばにいなくても、雅人を助けるには。

　もう、隠れて泣かなくていいように。



　雅人が、心から笑ってくれるために。



「……、美輝……!?」

　踵を返して、走り出した。賢が声をかけてきたのは聞こえたけれど、立ち止まることも振り返ることもなく、駆け出す。

　廊下を走っていると、病院内では走らないで、という注意書きがあったけれど、そんなもの関係ない。それどころじゃない。一秒でも早く、雅人の涙を止めるために今できることがある。
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