星空は100年後のレビュー一覧
大嫌いだった。いなくなってしまえばいいと思ってた。私から大切な人と時間を奪っていく、あの子なんて……。 大事に想う人がいるからこそ生まれる、嫉妬という気持ち。それがとても上手く表現されていて、まるで自分が美輝になったかのように、胸が苦しくなるシーンが幾つもありました。読んでいる間、「これでいいの?」って、美輝と一緒に考えることが沢山ありました。 恋人だったり、友人だったり、家族だったり、“大事”には色んな種類があること。当たり前なんだけど忘れがちなことを、改めて教えてもらったような気がします。 少し不思議な数日間、美輝が見えるようになったのは…あるはずのない彼女の姿だけではなく、人が人を大事に想う気持ち。 「星を壊す」と言った美輝ちゃんは、最高にカッコ良かったし、本当の意味で強くなったなって思いました。 間違いなく、読者が主人公と一緒に成長出来る小説です。
ただただ純粋に面白かった。 主人公と一緒に笑って、泣いて、悩んで、苦しんで。時々そんな主人公を横目に外から「あんたも鈍いね」なんて突っ込んでみたり。 野いちごに、それこそ星の数ほどある「泣ける物語」の中で、もし読者に選ばれるなら、是非こういう作品・作風・文体であって欲しい。 そう切に願います。 何よりタイトルが素敵でした。きらきらと輝いていて、どこまでも透き通ったこの作品にピッタリでした。
笑うことができる居場所と、泣くことができる居場所。それが同じだという人間もいるかもしれない。だけどなかには、違う人間もいるかもしれない。 雅人くんの前で無理して笑う美輝ちゃんは、とても滑稽で、だからこそとても愛しかったです。 そしてそれは、町田さんも同じ。 いがみあって、嫌いあって、ひとりの男を取りあって。よくある話かもしれないけど、そうじゃないなあって。 彼に、笑ってほしい。だけど自分の前で泣いてほしい。ふたりは違うようでとても似ていて、ふたりともが愛しくてたまらなかった。 美輝と目を覚ました町田さんの100年。雅人と美輝の100年。雅人と町田さんの100年。 そして、やっと泣ける場所を見つけられた美輝と、それを不器用に、けれど優しく見守っていくであろう賢、ふたりの100年。 読み終えたあと、彼らの100年が、とても楽しみになりました。
友達を大切にしたいという気持ち。 好きな人に対する恋心。 そして恋敵への嫌悪。 自分の理想通りにいかない現実を受け入れられず 甘ったれていた主人公が成長した瞬間を見て、 読んでいる自分まで成長したような気がしました。 『自分の大好きな人が大嫌いな人を大切にしていたら』 答えをくれる作品です。
変わること、変わらないこと。 変わるって怖い。 でも、変わるってドキドキ。 変わっちゃうこともあるから、変わらないことがキラキラ輝いたりするよね。 北極星みたいに、ずっと同じ場所で輝いている記憶。 大切に、大切に。 思えば思うほど変化って耐えられない。 誰かを本当に大切に思うことって。 変化もいとおしく思うことだと思う。 それって受け入れがたいこともあるけど。 乗り越えた美輝ちゃんはすごいな。 弱さも狡さも醜さもあるけど、ここで生きているみんなが、それぞれとっても可愛い。(おばちゃん目線) それってきっと、みんなが一生懸命で、真剣だからなんだなって思う。 みんなが、幸せになれますように。 そう願わずにはいられなくなる。 素敵な作品でした。
一番辛かった時。「ずっとそばにいる」。美輝には、そう約束してくれた幼なじみがいる。大切で、大好きで、いつしかそれは恋へと発展して、なのに彼は、別の可愛い女子と付き合いだして… まさかの展開に驚きながら、終盤。主人公と一緒に駆け抜けていくような感覚に、これぞいいよさんの疾走感!と、夢中でページをめくりました。 大切な人を笑顔にしたい。だから、そばにいたい。何かしてあげたい。いくらそう思っても、そばにいることを必要とされない。本音を、こぼしてくれない。 すごく切なかった。けれど、美輝がそんな自分の気持ちを押しとどめてまで、彼を笑顔にしてくれるモノを捜しに走った時には、キリキリと胸も喉も締め付けられました。 最後のシーンは、終わりの後の、新たな始まり。読み終えて、大切な人と星を見上げたくなる。そんな、爽やかで懸命で、素敵なお話です。
大好きな幼馴染みを奪われた。 奪った女の子は、軽くていい加減で大嫌い。 消えてしまえば良いのに……そう、思ってた。 この物語は人間味のある感情がたくさん溢れている、と強く印象を受けました。 物語にのめり込めばのめり込むほど、時に目を逸らしたくなるほどにキャラクター達の心情が溢れていて。 『好き』『嫌い』『本当の想い』『嘘の言葉』 まるで数多に広がる星のように散りばめられた感情の数々に、読後は沢山考えさせられてしまいました。 大嫌いな者同士なのに。 何故彼女は彼女の前にだけ現れたのか。 読み終えた時には、何となくその意味が分かったような気がします。 想いと、命と、この言い表せない不思議な感覚。 是非、一読して味わってほしい作品です。