Crescent Moon
私の職業、それは教師だ。
もう、6年になるだろうか。
高校で、学校の先生をやっている。
担当科目は、日本史。
文系ばかりが得意だった私は、どうせなら自分の国の歴史を教える仕事がしたいと思ったのだ。
自分が生まれた国のこと。
自分の国が歩いてきた道。
それを曲解された教えではなく、正しく歴史を教えたい。
伝えていきたいのだ。
大学の教育学部を卒業してから、すぐに高校教諭として勤め始めた。
プライベートはグタグダだけれど、これでも公私はいい意味でしっかり分けているつもりだ。
だらけたプライベートの私と、先生としての私は全くの別物だ。
(よーし、今日から新学期ね。)
スーツに袖を通すと、スイッチが綺麗に切り替わる。
プライベートの自分が消え、仕事モードに頭が移ってくれるんだ。
ピーンと、背筋が伸びていくのを感じる。
これは、いわば私の戦闘服。
もっとカジュアルな私服で仕事をする先生も今では多くなったけれど、私は断然スーツの方が自分に合っていると思う。
仕事をしていると感じることが出来るし、何より女だからといって下に見られることもない。
女性の先生も多いけれど、中身は意外と男社会なのだ。
携帯電話。
お財布。
学校で使うプリント。
今日必要な物をガサガサと大きめのバッグに詰め込み、足早にアパートを後にした。
風が心地いい。
新学期というものは、それだけでワクワクする。
新しい1年の始まり。
新しい季節の始まり。
業務としては生徒が変わるというだけで、教えるという作業は何も変わらないのに、どうしてこんなにワクワクするんだろう。
自転車に乗って、学校に向かう。
乗り慣れた自転車は、わざわざ実家から持ってきた物だ。
昔は車で通勤していたのだけれど、ここ最近になって自転車に切り替えたのだ。
理由なんて、簡単。
ダイエットになるからだ。