Crescent Moon



環奈が狙いを定めたのは、新任で来たばかりのあの男。

外面だけはいい、内面は悪魔の様なアイツ。


狙われているとも知らず、ニコニコと遠くで微笑む男。



環奈が、自信たっぷりに宣言しているのだ。


あの男は落ちる。

きっと、環奈の手の中に。



自信がたっぷりに環奈があの男を狙うと言えるのは、それだけ環奈が可愛いから。

女としての自信がなければ、ハンターの様に男を狙えはしないだろう。


若くて可愛い、音楽科の先生。

モテる先生の要素を、環奈は全て持っている。


私が知る限りでは、環奈が狙って落とせない男は1人もいなかった。




オススメなんてしない。

間違っても、内面を垣間見てしまった後では、あの男だけは薦められない。


私だって関わり合いたくないくらいなのだから、他人になんて尚更薦められるものではない。



(でも、まあ………経験にはなるのかな。)


いろいろな男と付き合った方が、経験にはなるのだろう。

それはいい意味でも、悪い意味だったとしても。


恋愛は、素敵な甘い経験だけを積めばいいものではないと思う。

時には、痛い経験も必要なのだ。


あの二重人格男と、ある意味同じカテゴリーの環奈がどうなるのかは、私の気になるところでもあるし。



(環奈は、1度決めたら曲げないからなー………。)


多分、誰も彼女を説き伏せることは出来ない。

それが先輩でもあり、同僚で1番仲のいい私であっても。


説得をとうに諦めた私は、ぼんやりと校長の話を聞く。


ボーッとした私の耳に届いたのは、信じられない言葉。

受け入れ難い現実を知らされることになってしまった。



「2年2組の担任は、瀬川先生でお願いします。」


ああ、今年は2年の担任になるのか。

まあ、年度末の頃に聞かされてはいたから、知っていたことだけれども。


問題は、その次に聞かされたこと。



「副担任は、冴島先生に受け持ってもらいます。」



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