Crescent Moon
2人きりになって、どうするの?
何の話をしろって言うの?
話すことなんて、何もないじゃない。
あっちにはあっても、私は何にも目の前の男のことなんて知りたくないんだから。
考えただけで、寒気がする。
身震いをして、立ち上がる私。
急に立ち上がった私を、残りの3人は一斉に見上げてくる。
「ちょ、ちょっと………お手洗いに行ってきますね。失礼します!」
こうして、今に至るという訳だ。
「はー………、もう、ほんとに嫌になる………。」
スウーッと思いきり煙を吸い込んで、ニコチンを体内に取り入れる。
ずっと禁煙していたからか、体はニコチンを欲していたらしい。
煙草を吸えば、溜まっていた鬱憤も少しは晴れてくる。
「煙草なんて、止めなさい!体によくないのは分かっているんでしょう?」
思い出すのは、厳しさばかりぶつける母親の姿。
悪い人ではないのだけれど、いかんせん押し付けるところがあるのが玉に傷なのだ。
「女の子なんだから、もっと女の子らしくしてちょうだい。」
いつもそう言って取り上げられてしまうから、袖の中に隠すしかなかった煙草の箱。
母親の目を盗んで、吸ってやろう。
こんな事態に陥ることを、私は頭のどこかで予想していたのだ。
「あー、どうやって、この事態を打開するかな………ほんと。」
青い空を見上げながら、呟いた一言。
煙草の白い煙が、空に溶け込んでいく。
線を描いて、静かに昇っていく白煙。
いくら考えても、いい方法なんて思い浮かばない。
この事態を打開する方法なんてすぐ浮かぶくらいなら、もうとっくの昔にやっている。
でも、どうにかしなければ。
どうにかして、この見合いを流さなければ。
結婚はしたい。
だけど、私が望んでいるのは、こんな形で結婚することなんかじゃない。
一生に1度のことなら、自分が納得する形で成し遂げたい。
それだけのことなんだから。
私はただひたすら、母親とこの見合いから逃げ出す方法を考えていた。