執事の加藤さん。
「どうした、加藤?」
俺の状態に気付いたお嬢様。
そう、俺は顔を逸らしたのはいいものの、逸らしても逸らしてもお嬢様を見てしまっていた。
だから思わずベッドに顔を押し付けた。それはもう、窒息しそうなぐらい。鼻がヘコんでしまうくらい。
「お、お嬢様…」
「…うん」
「お嬢様」
「うん」
俺はずっと「お嬢様」を呼ぶ。お嬢様はずっと「うん」て答える。
あぁ、どうしてこんなに胸が苦しいんだろ。どうしてこんなに愛おしいと思うんだろう。どうしてこんな泣きそうになるんだろ。
「お嬢様、なんだか胸とか心臓の辺りが痛いです」
「えっ!?それ大丈夫かよ。今から医者呼ぶか?」
「いえ、寝れば大丈夫だと思います。うぅ…」
ちょっとだけ、涙が出た。
だってお嬢様が…何だか優しく感じるんだ。
それが嬉しいのか、俺は目頭が熱い。
すると、頭に何かが乗ってきた。
それはお嬢様の手だった。
お嬢様が俺の頭に手を置いて、優しく撫で始めたのだ。