【長】野球ボール
「窓も開いてるし、扇風機の前は涼しいぞっ」


爽やかに笑顔で言う一輝。


はぁー…と、ため息をついてあたしは諦めた。

今日はこの暑い部屋で過ごすのか…。


「てか一輝、もうすぐ誕生日だよね?何が欲しい?」


「別にいらねぇよ。叶夏が一緒にいてくれれば」


まーたそんな、キュンとする台詞。


でも困った。

今年はどうしよう。




「あ、そうだ。これ見て。懐かしくて持ってきちゃった」


あたしは鞄から野球ボールを3つ取り出した。


「げっ。そんな恥ずいもん持ってくんなよ」


「何よ!!あたしがあげたボールはしっかり飾ってるくせにっ」


シンプルな一輝の部屋の中央には、不釣り合いな言葉が書かれたボールが並んでる。


「バーカ。それとこれとは別の話」


一輝の場合、自分で自分が書いた言葉が恥ずかしいだけだと思うけど。

でも、これも大切な想い出。
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