線香花火
「泣いてるときは折れそうなくらい弱いのに、そういうとこ見せたがらないんだよな。今も昔も、そういう基本のところは全然変わってない。…さしずめ、失恋でもしたって感じ?」
直球。ど真ん中ストレート。らしいと言えばらしい。
「嘘がないよね、聡太には。」
「嘘なんて嫌いだろ?」
「…まぁね。」
「好きだったんだ。結構本気で。」
「…んー…まぁ、それを忘れたくてっていうか、現実逃避したくてここに来たんだけどね。でもやっぱり我慢できなかった。」
「やっぱり?」
聡太が顔を覗き込む。こういう表情は中学の頃のままだ。
「…結婚するんだって。私、付き合ってるのにも全く気付かなかった。同期だったし、普通に仲が良かったから…言い方は変だけど、油断、してたのかも。」
「ライバルはいないって?」
「…うん。…難しいなぁ恋愛、って今回余計に思っちゃった。」
「どうして?」
「自分のことだけじゃないもん。相手がいて初めて成立するものでしょ?相手のことなんて全然わからないよ。大人になればなるほど、…わからなくなる。表情とか読めるようになってきたって思うけど、そんなの大きな勘違いだったし。大人は平気で嘘つくし、浮気もするし、好きって気持ちだけじゃどうにもならないときもあるし。」
「…それ、主語は『大人は』じゃなくて『男は』だな。」
また軽く頭を撫でられる。そろそろ本気で子ども扱いされ始めたようにも思う。
「澪波がどういう男相手に恋愛してきたのか、俺は全然知らないけどさ。」
「…うん。」
今度は澪波の方が顔を向けた。波を見つめていた聡太の顔が、ゆっくりと澪波の方を向く。
「澪波はいい意味で純粋なままなんだよ。子どものときから変わってない。真っ直ぐで、透明なままなんだって、今回会って話してて思った。澪波は何も変わらない。一番大事な部分だけは、ずっと。」
「…一番大事な部分って何?」
「心だろ。信念とか、考えとか、その人固有のものというか、そういう目に見えないけどちゃんとあるもの。澪波はそのままでいいんだって。泣きたいときに我慢しちゃうけど、それでも結局泣いたり、でも強がってみせたり。俺はそういうの、面白くて好きだけど。」
またしてもさらりと言われた。『好き』という言葉を、目の前の男はあまりにもさらっと使う。
直球。ど真ん中ストレート。らしいと言えばらしい。
「嘘がないよね、聡太には。」
「嘘なんて嫌いだろ?」
「…まぁね。」
「好きだったんだ。結構本気で。」
「…んー…まぁ、それを忘れたくてっていうか、現実逃避したくてここに来たんだけどね。でもやっぱり我慢できなかった。」
「やっぱり?」
聡太が顔を覗き込む。こういう表情は中学の頃のままだ。
「…結婚するんだって。私、付き合ってるのにも全く気付かなかった。同期だったし、普通に仲が良かったから…言い方は変だけど、油断、してたのかも。」
「ライバルはいないって?」
「…うん。…難しいなぁ恋愛、って今回余計に思っちゃった。」
「どうして?」
「自分のことだけじゃないもん。相手がいて初めて成立するものでしょ?相手のことなんて全然わからないよ。大人になればなるほど、…わからなくなる。表情とか読めるようになってきたって思うけど、そんなの大きな勘違いだったし。大人は平気で嘘つくし、浮気もするし、好きって気持ちだけじゃどうにもならないときもあるし。」
「…それ、主語は『大人は』じゃなくて『男は』だな。」
また軽く頭を撫でられる。そろそろ本気で子ども扱いされ始めたようにも思う。
「澪波がどういう男相手に恋愛してきたのか、俺は全然知らないけどさ。」
「…うん。」
今度は澪波の方が顔を向けた。波を見つめていた聡太の顔が、ゆっくりと澪波の方を向く。
「澪波はいい意味で純粋なままなんだよ。子どものときから変わってない。真っ直ぐで、透明なままなんだって、今回会って話してて思った。澪波は何も変わらない。一番大事な部分だけは、ずっと。」
「…一番大事な部分って何?」
「心だろ。信念とか、考えとか、その人固有のものというか、そういう目に見えないけどちゃんとあるもの。澪波はそのままでいいんだって。泣きたいときに我慢しちゃうけど、それでも結局泣いたり、でも強がってみせたり。俺はそういうの、面白くて好きだけど。」
またしてもさらりと言われた。『好き』という言葉を、目の前の男はあまりにもさらっと使う。