線香花火
* * *

「んあー!楽しかった!」
「なんで線香花火、澪波に勝てないんだろ…。」
「日頃の行いじゃない?」
「それは絶対俺、悪くないんだけど!」

 りんご飴に焼きそばを食べ、線香花火を買ってもらって勝負した。お化け屋敷に入ろうと誘われたけれど、それは丁重にお断りした。(ホラー系が苦手だと知っているはずなのに誘ってくるなんて!)

「親父たち、多分飲んで待ってるから。」
「おじさんたちに会うの、ものすっごく久しぶり!…ってもしかしてメイク直したほうがいいかな?」
「どれどれーよぉーく顔見せて?」
「っ…!またふざけてっ…!」

 がしっと両頬を挟まれて、視線を逸らせないようにされてしまうとどうしていいかわからない。

「んっ…!」

 額に唇の柔らかい感触を感じた。唇の離れる音が聞こえればそれは確実に錯覚などではない。

「大丈夫。いつでもキスしたいくらいには可愛い。」
「っ~!あんたはっ!」
「とりあえず早く帰ろう?多分澪波のこと、相当待ってる。」
「うわ、そうなの!?早く帰ろう!」

 そこからは少し小走りで、歩き慣れた道を帰る。

「鍵出すから待って。」
「うん。」

 ガチャリと音がした。玄関に懐かしい顔が二つ、出てきてくれる。

「澪波ちゃん!あらまー綺麗になっちゃって!どうしてもっと早く連れてこないのよ、聡太!」
「どうしてって…澪波には澪波のペースってもんがあるだろ?」
「随分綺麗になったなぁ、澪波ちゃん。」
「おばさん!おじさん!お久しぶりです。」
「さぁさぁ入って。美味しいお酒もおつまみも用意してあるのよ。」
「澪波ちゃんと飲めるなんておじさん、嬉しいなぁ~。」
「親父、顔緩み過ぎ。」

 懐かしい空気がここにある。小さい頃はよく遊びに来た。おばさんもおじさんも変わらない。ただ変わったのは、昔ここでした食事にはアルコールが出なかったことくらいだ。

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