線香花火
* * *

 食事を終え、お風呂は何とか拒むことに成功し、今に至る。今はというと、もう…眠い。

「澪波ー!お風呂ありがとうっておい!なんでもう寝てんの!?」

 澪波はといえばシングルベットに横たわっていた。もちろんお風呂の方には背を向けて。

「んー…眠くなった…満たされ過ぎた…。」
「ちょっと待って!俺が足りない!」
「そんなの…知らない…主役…私だもん…。」
「そうだけど!とにかくベット入れて!」
「狭いから落ちるよ…。」
「くっつくからいい。」

 そう言うと、まさに有言実行してくるのが聡太という男だ。澪波を背中から抱き締め、首筋に鼻を埋める。

「はぁ…いい匂い。澪波の近くにいるって感じがする。」
「これでもかってくらい近くいるからね。」
「うん。幸せ。…好き。」

 首筋に吸い付いた唇を感じる。音を鳴らしたのはきっとわざとだ。

「…どさくさに紛れて何やってんの。」
「何やってるって、澪波ちゃんをその気にさせようと思って。」
「両手で両胸鷲掴みってどういうことよ。」
「鷲掴みっていうほど強くしてないよ。ていうかノーブラ?」
「寝るとき苦しいんだもん。」
「通りで形変わるわけだ。」
「揉みすぎ!いい加減にしてよ!私は眠いって…んっ…。」

 胸の中で向きを変えたのがいけなかった。そのまま澪波を下にして、その上に聡太が覆い被さるようにして唇が重なった。角度を変えてはより一層深く交わる唇に息があがる。呼吸ごと飲み込まれていくようなキスが止まない。

「ちょっ…あ、う、んっ…。そ、うたっ…!」
「なに?」
「キス…早い…。せめて、ゆっくりが…いい。」
「あ、ごめん。何も焦る必要ないもんな。じゃあ、時間をかけてゆっくり、…愛してあげるから。」

 ゆっくりと唇が交わった。ゆっくり離れてすぐくっついて。甘い音をひとつひとつ鳴らしながら、唇の味を堪能する。
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