線香花火
 気がつくとパジャマのボタンは外れ、ノーブラの胸元はほとんど露になっていた。ここまでくると眠気はぶっ飛んでしまっている。

「んっ…。」

 澪波の唇を味わい尽くした聡太の唇が狙う先は胸だ。胸のいたるところに吸い付いては赤い花を散らしていく。

「白いね、肌が。」
「っ…いつも…胸が多いっ…。」
「じゃあ唇も多くしよ。」
「そういう意味じゃ…。」

 抵抗したって聡太にはお見通しなのだ。何をされたって嫌じゃないこと。厳密に言えば、聡太は澪波が本気で嫌がることをしないということを澪波が感覚的にわかっているからこそ、結局は全てを委ねることを。

「澪波。」
「…っ…なに…?」
「…可愛い。朝までたっぷり、全部頂戴。」
「……聡太。」
「ん…?」

 聡太の首に腕を回して、耳元に唇を近付ける。

「…今日はありがとう。…聡太、大好き。」

 ちゅっと音が残るように頬に口付けた。された側の聡太といえば間抜けな顔だ。

「今の…澪波…、ちょっと、おかしいくらい…可愛いだろ…。もう止まれないからな。全部澪波のせい。」

 訳のわからない理屈を並べて正当化してくるこの男だけが、自分をこんなにも幸せな気持ちにしてくれる。すごく不思議で、すごく当たり前のことのようだ。

「…ほんとに、朝まで?」
「有言実行、するまででしょ?」


*fin*



*おまけ*

 いつ意識を手放したのか覚えていない。ただ、朝の光が差し込む頃まで繋がっていたのは確かだ。
 目が覚めて横を見やると幼い寝顔の幼馴染みがいる。ほんの数時間前(おそらく)まで執拗に澪波を求めてきた男がこんなにあどけない寝顔を晒すなどと誰が想像できるだろう。

「んー…澪波…?」
「あ、起きちゃった。せっかく寝顔眺めてたのに。」
「寝顔?」
「寝顔見たら安心した。ちっちゃい頃もこうして一緒に寝たことあったでしょ?あの頃と同じだなぁって。」
「あの頃は服着てたけどね。」
「服着てて我慢できないやつになっちゃったからでしょ?」
「んーまぁそうとも言える。ねぇー澪波ちゃん。」
「なに?」
「このまま、抱き合ったままもうちょっと寝たい。」
「…私も、まだ起きたくない、かな。」
「じゃあ寝よ。おやすみ、澪波。」

 額に落ちたキスに目を閉じて、唇が離れたのと同時に目を開ける。
 このあどけない寝顔だけは、もう少し独占させてと願いながら、澪波はゆっくりと目を閉じた。

*おまけ fin*
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