線香花火
おいでよ
* * *
風呂を終え、タオルドライ程度しかしていない湿った髪のまま、聡太はリビングに戻ってきた。
「ふぅ…。」
「ここ最近、帰り遅かったね。」
「んー…ちょっと人手不足でさ。」
「そっか。あ、温かいものでも飲む?淹れてくるよ。」
「澪波が飲みたいもの、俺の分も用意してくれると嬉しい。」
「はーい。聡太はソファから動いちゃダメだからね。そこでゆっくり休むこと。」
「はぁい。」
聡太はゆっくりとソファに沈み込んだ。金曜の夜までよくもったものだと、心の中で自分を褒めることができるくらいには今週はなかなかにハードだった。今日はようやく、澪波が起きている時間に帰ってこれた。とはいえ、日付があと30分で変わろうとしているのだけど。
「カフェインレスのお茶、用意しててよかった。これ、聡太が早く帰ってきたら一緒に飲みたいなと思ってたんだ。」
「…ありがと。」
些細な気遣いがしみた。少し息を吹きかけて冷ましてから、聡太はそっとマグカップに口をつけた。それを見てから、澪波も続いた。
「美味しい!このメーカーさんのはやっぱり美味しいね。」
「うん。この味、俺も好き。」
半分くらい飲むと、聡太はマグカップをソファ前にあるローテーブルの上に置いた。小さく息を吐きだすと、澪波のほうにそっと体重を預ける。重いだろうなとは思うものの、疲れ切った心を澪波で癒したかった。重みを感じた澪波も、飲み終わっていないマグカップを置く。
「聡太。」
「んー?」
「横からじゃなくてさ、おいでよ、真正面から。」
聡太は体を起こして澪波の方を見つめると、澪波が聡太に向かって両手を広げている。
「疲れてて、なんだか甘えたい気分なのかな…と思ってるんだけど、合ってる?」
「…はは、合ってる。」
その腕の中にそのまま体を預けた。華奢なのに、力強く背中に回った腕に疲れがゆるゆるとほどけていくのを感じた。
「…あったかぁ。」
「お風呂上がりだから、多分聡太の方があったかいけどね。」
ふふと軽やかに笑う声が聡太の右耳をくすぐった。
風呂を終え、タオルドライ程度しかしていない湿った髪のまま、聡太はリビングに戻ってきた。
「ふぅ…。」
「ここ最近、帰り遅かったね。」
「んー…ちょっと人手不足でさ。」
「そっか。あ、温かいものでも飲む?淹れてくるよ。」
「澪波が飲みたいもの、俺の分も用意してくれると嬉しい。」
「はーい。聡太はソファから動いちゃダメだからね。そこでゆっくり休むこと。」
「はぁい。」
聡太はゆっくりとソファに沈み込んだ。金曜の夜までよくもったものだと、心の中で自分を褒めることができるくらいには今週はなかなかにハードだった。今日はようやく、澪波が起きている時間に帰ってこれた。とはいえ、日付があと30分で変わろうとしているのだけど。
「カフェインレスのお茶、用意しててよかった。これ、聡太が早く帰ってきたら一緒に飲みたいなと思ってたんだ。」
「…ありがと。」
些細な気遣いがしみた。少し息を吹きかけて冷ましてから、聡太はそっとマグカップに口をつけた。それを見てから、澪波も続いた。
「美味しい!このメーカーさんのはやっぱり美味しいね。」
「うん。この味、俺も好き。」
半分くらい飲むと、聡太はマグカップをソファ前にあるローテーブルの上に置いた。小さく息を吐きだすと、澪波のほうにそっと体重を預ける。重いだろうなとは思うものの、疲れ切った心を澪波で癒したかった。重みを感じた澪波も、飲み終わっていないマグカップを置く。
「聡太。」
「んー?」
「横からじゃなくてさ、おいでよ、真正面から。」
聡太は体を起こして澪波の方を見つめると、澪波が聡太に向かって両手を広げている。
「疲れてて、なんだか甘えたい気分なのかな…と思ってるんだけど、合ってる?」
「…はは、合ってる。」
その腕の中にそのまま体を預けた。華奢なのに、力強く背中に回った腕に疲れがゆるゆるとほどけていくのを感じた。
「…あったかぁ。」
「お風呂上がりだから、多分聡太の方があったかいけどね。」
ふふと軽やかに笑う声が聡太の右耳をくすぐった。