線香花火
「澪波…?」
「え、あ、ごめん。ちょっと考え事してた。」
「…そっか。」
「エイヒレとたこの唐揚げだよ!」
「うわぁー…美味しそう!」

 二人で顔を見合わせて、ゆっくり箸を持つ。

「「いただきます。」」

 エイヒレをまずはいただくことにする。焦げ目が香ばしそうだ。

「ん~!美味しい!味が濃くない!」
「本来の味が旨いんだよ。」
「そうだね。」

 味付けを濃くされたら、本来の味なんてわからない。本来のものの良さがわかるのが田舎の良いところだと気付かされる。

「はぁ~癒される~!美味しいご飯に美味しいお酒。」
「食い意地はってる奴みたい。」
「違うし。」
「知ってるよ。」

 時折、澪波の知らない笑みがこぼれる。彼、聡太はこんな風に大人びた表情をしていただろうか。

(って、よく顔をあわせてたのって中学の頃じゃない。その頃と同じなはずがないって。)

「ん?どうした?」
「…なんか、変な感じだなぁって。」
「変?何が?」
「こうして何事もなかったかのように聡太と顔をあわせて、ご飯食べて、お酒飲んでるのが。」
「…んー、まぁ、本当に偶然、だからな。」
「でも、助かる。」
「なんだそれ。」

 ふはっといういつもの笑い。こっちの方がなんだか安心する。

「…ノープランで帰ってきちゃったからね。」
「俺は暇潰しってわけか。」
「まぁー…そうかな。」
「素直なやつだな。俺はそれでもいいけど。」

 前と変わらないところを見つけては落ち着くし、昔の面影とは違うところを見つけてはざわつく、身勝手な心を、澪波はなんとなく感じていた。
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