チャリパイ9~チャリパイvs宇宙人~
板倉茂蔵(いたくら しげぞう)五十五歳
中卒で工事現場の仕事を30年、現場監督にまで登りつめたが、45歳の冬、腰痛を患って退職。その後知り合いの紹介で、このテレビ局の守衛を始めて10年目の夏を迎える。
「あれが守衛さんね……」
シチロー達は、守衛所から少し離れた位置から、板倉の様子を観察していた。
板倉は、通行するテレビ局の職員やタレント、あるいは業者のすべてに愛想よく挨拶をしていた。
「ああ~どうも♪ご苦労様です♪」
注意深く見ていると、すべての人間に通行証の提示を要請している訳では無いようだ。
「ほら見ろ♪全員に通行証を見せろと言ってる訳じゃないぞ♪
業界関係なんて、結構いい加減なもんなんだ」
シチローは、得意そうに板倉の方を指差し、自分の正当性を主張した。
「オイラが最初に行くから、みんな後に続くんだよ♪」
業界人らしくブランド物のサングラスをかけて、シチローは守衛所の方へと歩いて行った。
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