よろずくんの居候
壱:得体の知れない少年







16回目の誕生日を迎えた。


まぁ、だからといって特別豪華な食事やケーキの期待はできないんだけど。



ここ最近ずっとそうだが、本日の夕飯もカップラーメン。


ただ、いつもより豪華なものにしてしまった。




「特盛り塩バターラーメン……ふふふ」




いつも食べている塩ラーメンより大きなカップ。


そしてバター。


なんとも言えない幸福感だ。



これに漬物なんかあればもっといいのだが、弥生さんにもらった漬物はもうなくなってしまった。


そうそう、弥生さんと言えば今朝にすいかをくれたんだった。


しかも親切に「一緒に祝ってあげたかったけど」なんて言って微笑んでくれた。


どうやらバイトらしい。


大学生ともなると自分で稼がないといけないのか。

夏休みだというのに大変だなぁ。


弥生さんとはとなりの小さな家に住んでいる大学生のお兄さんで、両親が仕事でほとんど家にいないことを気遣い、いろいろお裾分けしてくれる。


見た目も温和で爽やかというかなりの好青年だというのに彼女はいないらしい。


いやはや、もったいないものだ。



外から聞こえる雨音に耳を傾けながら考えていると、ピピピとタイマーが鳴った。


おや、カップラーメンができてしまった。


ちなみに私は固めが好みなので1分早めている。



すん、と鼻を鳴らすと塩バターのいい香りが私の身体中を満たした。


たまらない。




「さてと、塩バターが私を待っている」




古びていて今にも壊れそうな木製の扉を開けて、一階へと続く階段を下りる。


この階段も、というよりはこの家自体がかなり古いもので、歩く度にギシと不気味な音が響く。


最近は慣れてきたけど、ここに住み始めた当初は怖くて逃げ出したくなった。



「るんるんるん、塩バター。君はなんでこんなにも愛しいのー。息を吸う度君の顔が浮かぶのー」



即興で生み出した塩バターラーメンのうたを歌いながら、居間の襖を開けた。




「塩バタバタバタ塩バター……バター?」



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