よろずくんの居候
*
「あ、千晴ちゃん。おはよう」
「おはようございます」
翌日、いつものように家前の通りに水を撒いていると、朝刊を取りに弥生さんが出てきた。
寝起きのようで、寝癖が立っている。
「いつも早いね」
「弥生さんは夜遅くまでお疲れさまです。あ、すいかおいしかったです」
「今日は休みだからゆっくりできるよー。おいしかった?それはよかった!」
おいしかったと言っただけなのに、弥生さんは心底嬉しそうに笑った。
本当に純粋というか純朴というか、今時めずらしい人だ。
「……ん、今日はわかめの味噌汁?」
「わかりました?はい、朝はわかめにしました」
弥生さんは匂いだけで味噌汁の具を当てるのが得意で、朝に会うと必ず当てられる。
匂いが強いわけでもないのに、よく当てられるなぁと毎日感心させられる。
「いいねぇ。俺は今日もパンかなぁ」
「パンだけですか」
「うん。ジャムを塗ってね」
「よかったら、朝食食べに来ます?」
「え!?いいの!?」
わかりやすすぎる喜びの反応。
目を輝かせ、ずいっと詰め寄ってきた。
その勢いに気圧され後ずさる。
「は、はい。パンだけじゃ栄養不足ですよ」
「じゃあお邪魔しようかな!」
「どうぞ」
残りの水を撒いて、桶を庭に戻し、家の中に案内した。
ごはんと味噌汁は作ってあるから、あとは目玉焼きでも作ろうかな。
朝食のおかずを思い浮かべながら、居間の扉を開ける。
「……え」
「あれ?千晴ちゃんの友達?」