よろずくんの居候
「……どうも」
「どうもじゃないよ!」
居間のちゃぶ台の前に昨晩同様正座している少年……よろずがいた。
だからなんでいるんだよこいつは!
「出てけって言ったよね!?」
「出て行くなんて言ってない」
「はぁ!?」
「ちょ、ちょっと落ち着いて。この子誰なの?」
「知らないです。昨日の夜急に現れて私のラーメンを食べやがったんです!」
「置いてあったから食べていいのかと思った」
「よくないわ!」
飄々とした顔のよろずと怒りに満ちた顔の私が言い合いをしている間で、オロオロしている弥生さん。
弥生さんには申し訳ないけど、今は我慢してもらおう。
なんたってこいつは私のご馳走を奪ってくれた極悪人だ。
しかも出て行けと言ったにも関わらずまた現れるなんて、冷静になれるわけない。
「ごはんはまだ?」
「あんたに食わせるごはんはないから!」
「待ってたのに」
「いやいや何をキレてるの!?」
ぶん殴ってやりたいほど怒っているのは私なんだけど!
今にも飛び出しそうな拳をなんとか押さえながらよろずを睨み付ける。
「えっと……君は誰?」
「よろず」
「よろずくんか……。千晴ちゃんの友達?」
「違う」
「断じて違います」
「え。じゃ、じゃあ、なんでいるの?」
「もともと俺のほうが先にいた。身体がなかったからそいつには見えないし、何も触れなかったけど」
「何いっちょまえにオカルト的発言してんの!?あんた不法侵入だからね!?」
「いや、俺のほうが先にいたし」
ダメだ、ペースが掴めない。
というかこいつそのものが掴めない、掴みたくない。
「妖怪……」
ふと、弥生さんが呟くと、よろずは親指を立てた。
「ないす。そんなところ」
「……は?」
「わぁ、すごい!妖怪って本当にいるんだね!狩衣を着てるなんて珍しいと思ったら!」
待って。私が異常なのかな。
弥生さん、何を話しているんですか。