【完】純白の花に、口づけを。
「その相手がさ、依千花さんだけだから。俺は、依千花さんが和架の元を離れたら、いつか和架が壊れるんじゃないかって思ってる」
“それが俺の怖いことだよ”と、亜希はメガネをかけ直した。
「……壊れねぇよ」
「ううん。和架は溜め込むから」
「んなこと言ったら、お前だってそうだろ」
「違うよ、和架。俺の場合は、自らそれを隠してる。でも、和架は違うんだよ」
亜希はふっと遠くに視線を向けた。
「だから、依千花さんはすごいって思うんだよ。あの人は、和架の異変にすぐに気づくでしょ。それで、和架の本心を聞き出してる」
「千花がそんなことするのは、俺だけじゃねぇよ。瑞希もよく聞かれてるしな」
「あのね、和架。今の和架は、依千花さんが先に気づいて和架の不安を取り除いてくれるから、和架はそこまで溜め込んでないだけ」