【完】純白の花に、口づけを。



「和架」



「ん…?」



「今日は、俺らは依千花ちゃんのとこに行かないよ。さすがに夏休み、俺も遊び過ぎて親に怒られたからね」



「亜希、」



「ああ、そうだ。和架に頼み事していい?」



「頼み事?」



亜希が頼んでくるなんて、ロクなことじゃない。



そう思ったけど、亜希は案外普通なものを口に出した。




「依千花ちゃんに、“ありがとう”って伝えといてくれる?」



「……?」



「中学生の頃の彼女に恋した男の、あんな一瞬しか会話しなかった俺のために」



亜希は、優しく笑ってみせた。



「俺の親、説得してくれてありがとうって。俺の婚約を解消するために、白魏と佐渡が手を組むように。夏休み、依千花ちゃんがずっと動いてくれてたんだ」



< 164 / 347 >

この作品をシェア

pagetop