【完】純白の花に、口づけを。
「和架」
「ん…?」
「今日は、俺らは依千花ちゃんのとこに行かないよ。さすがに夏休み、俺も遊び過ぎて親に怒られたからね」
「亜希、」
「ああ、そうだ。和架に頼み事していい?」
「頼み事?」
亜希が頼んでくるなんて、ロクなことじゃない。
そう思ったけど、亜希は案外普通なものを口に出した。
「依千花ちゃんに、“ありがとう”って伝えといてくれる?」
「……?」
「中学生の頃の彼女に恋した男の、あんな一瞬しか会話しなかった俺のために」
亜希は、優しく笑ってみせた。
「俺の親、説得してくれてありがとうって。俺の婚約を解消するために、白魏と佐渡が手を組むように。夏休み、依千花ちゃんがずっと動いてくれてたんだ」