【完】純白の花に、口づけを。



あんまり、和架は泣いたりしないけど。



それでも、数少ない彼の涙を私は知ってる。



「抱きしめて、あげたいのよね」



彼のふわりと柔らかい髪を撫でて、指に優しく絡めた。



結婚しても、彼を抱きしめてあげたい。



結婚しても、彼を守ってあげたい。



もう和架が縋れるのは、私だけ。



「ん……」



小さく息をこぼした和架が、身を捩る。



どうやら、胸に顔を埋めなおしただけらしい。



「ふふ……」



本当、可愛い。




「ごめんね、和架」



きっと泣かせてしまうんだろう。



結婚を選んだのは、私の逃げ。



彼の傍にいたいけど。



自分をずっと愛してくれていたハルに、縋った。



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