【完】純白の花に、口づけを。
◎胸の痛みと苦しさ
「……、」
言いようのない、苦しさに襲われる。
熱でしんどくて、思考がおぼつかないはずなのに。
“ありがとう、和架”
愛おしさに塗(マミ)れた言葉を聞いても、千花が「傍にいる」と言ってくれることはなかった。
「わかってた、はずなのにな」
俺の部屋にしてくれれば良かったのに。
ベットとか、部屋全体から香る千花らしい甘い香りとか。
優しくて、でもシンプルな色合いのこの部屋にいるだけで、千花のことばかり考えてしまう。
それでなくても、千花のことばかり考えてんのに。
「っ、」
ずきん、と。
また胸に重い痛みが走る。
姉も母親もいらないから、ただ千花に傍にいてほしい。
……千花のためなら、なんだって出来るから。