【完】純白の花に、口づけを。
自惚れて、溺れて。
「千花、やっぱ無理。キスしたい」
「っ、」
何も言わずに涙を滲ませて、俺の背中にぎゅうっと抱きついてきた千花の行動は、否定してるようには見えなくて。
柔らかい唇に、再び口づける。
たった一度、ほんの少し触れるだけ。
「千花…」
耳元で名前を囁くと、千花の体がピクリと揺れる。
「俺も千花といたら、“苦しい”」
いなくても、苦しいけど。
愛おしさで、胸が詰まって。
それで、苦しくなる。
千花が、俺の耳元に唇を寄せた。
「……────」
小さく囁いた千花の言葉に、期待して自惚れてしまうのは、やっぱり俺の方だ。