【完】純白の花に、口づけを。



「千花?」



「ごめんね、ちょっと今は言えない。先に、さっきの話の続き聞いてもいい?」



「……わかった」



千花に返事をしたあと。



「いらないなら、今すぐここで川に捨ててくれればいい」



そう言ってポケットから、“あるもの”を取り出す。



「ゆ、びわ…?」



千花の瞳が、ゆらゆらと揺れた。




指輪っていっても、高いもんじゃねーし。



まぁ、テレビとかでよく見るプロポーズの指輪みたいなもんだけど。



「そんなに高くねーよ。でも、今の俺の中ではこれが精一杯」



「っ、」



「いらないなら、捨てて。でも、」



でも。



ひとつだけこれは、決めてたこと。



「受け取ったら、俺は千花を二度と手放さない」



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