【完】純白の花に、口づけを。



喉が乾いて、声が出なくなる。



「結婚、って……」



唐突に突きつけられたそのふた文字に、どうしようもなく戸惑う。



「詳しいことは今は言えないけど、一言で言えば政略結婚みたいなものよ」



政略結婚するぐらいなら、結婚せずに俺の傍にいてほしい。



「和架のこと、哀しませちゃうわね」



切実なその声に、俺はきっと千花を傷つけてしまってるんだろうと、何も言えなくなった。




「俺は、」



「うん」



「………」



俺は、何が出来る?



きっと、このまま千花を引き止めても。



千花の隣に並ぶことは、不可能だろう。



「──…応援、してるよ」



これ以上何も言えなくて、ぎゅっと抱きしめるだけだった。



肩口に顔を埋めていたせいで、千花の優しい笑みが消えていたこと、俺は気づくわけもなくて。


< 62 / 347 >

この作品をシェア

pagetop