【完】純白の花に、口づけを。
喉が乾いて、声が出なくなる。
「結婚、って……」
唐突に突きつけられたそのふた文字に、どうしようもなく戸惑う。
「詳しいことは今は言えないけど、一言で言えば政略結婚みたいなものよ」
政略結婚するぐらいなら、結婚せずに俺の傍にいてほしい。
「和架のこと、哀しませちゃうわね」
切実なその声に、俺はきっと千花を傷つけてしまってるんだろうと、何も言えなくなった。
「俺は、」
「うん」
「………」
俺は、何が出来る?
きっと、このまま千花を引き止めても。
千花の隣に並ぶことは、不可能だろう。
「──…応援、してるよ」
これ以上何も言えなくて、ぎゅっと抱きしめるだけだった。
肩口に顔を埋めていたせいで、千花の優しい笑みが消えていたこと、俺は気づくわけもなくて。