魔女の瞳
エリスは快活そうに、舌足らずな口調で言う。

「私、本物の魔女さんに会ってみたかったんです。本物の魔女さんに会って、私も魔術を教えてもらって、魔女になりたいなと思って」

「……」

呆れて物も言えなかった。

この子は魔女と魔術師を勘違いしている。

魔術師なら、まだエリスの年齢からでも鍛錬すれば、真似事くらいはできるようになるかもしれない。

しかし魔女は、魔道の探求者。

生まれた時に魔道の家系に生まれた者しか、魔女にはなれない。

幼い頃から怪しげな薬などを飲まされ、魔術に堪えうる肉体改善をして、初めて魔女としての素養が備わるのだ。

だから普通のごく一般的な家庭に生まれ育った者が、急に魔女になる事は出来ない。

魔女は生まれた時から魔女なのだ。

「そういう事で、貴女は魔女にはなれないわ」

私はエリスに背を向ける。

「悪い事は言わない。魔術に関わろうなんて考えないで、まっとうな人生を歩みなさい。魔女になったって碌な事はないわ。早くお家に帰りなさい」

そう言って歩き出す私に。

「お家はもうありません!!」

エリスは叫んだ。

「お母さんが魔女裁判で処刑されて、お父さんもお兄ちゃんも魔女に関わった者として村を追われました。たまたま留守にしていた私だけが残って…もう私に、帰る場所はないんです」

「……」

私がもう一度振り返ると、エリスは泣いていた。

「お母さんが魔女呼ばわりされて殺されたんなら、私は本物の魔女になってやろうと思って」


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