魔女の瞳
第三章

夢を見る。

多分この頃だと、エリスと暮らし始めて一週間くらい経った頃じゃないかな…。






「そろそろ日が暮れて来たわね」

私は窓の外を見ながら言う。

「エリス、灯りをつけて」

「はあい」

私の言葉にエリスは返事して。

「えい」

指先から放った魔力の光で、ランプに炎を灯した。

…磁石の近くに金属を置いておくと磁力を帯びるように、強い魔力を持つ者のそばにいると、魔力を発現する事がある。

エリスはまさしくそれだった。

特に私が何か教えた訳でもないのに、エリスはいつの間にかコツを掴み、魔力をコントロールして火を灯せるようになっていた。

といってもそれ以外はそんなに大した魔術が使える訳ではない。

基本中の基本である火を灯す程度しかできないし、高速詠唱はもちろん呪眼なんて持ってもいない。

魔女には程遠い中途半端な存在。

それでも一週間でここまでできるようになる者はそうはいない。

もしかしたらきちんと鍛練を積ませれば、魔女は無理にしてもかなりの魔術師には育つのではないだろうか。

魔道の世界に足を踏み入れさせる気はなかったものの、私はエリスに魔術を行使する者としての素質を見出していた。
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