魔女の瞳
そんな時代だ。

森の中で一人暮らししている私みたいな娘は、恰好の獲物だった。

誰が密告したのか、私は魔女裁判に引きずり出された。

拷問なんてされて痛い思いをするのは嫌だったから、早々に魔女である事を認めた。

そして火炙りと溺死刑、どっちがいいか、なんて訊くもんだから、じゃあ溺死させてもらおうという事になったのだ。

…結論から言うと、溺死も御免だ。

一時間も沈められてるのは勿論だが、真冬に水の中に浸けられるというのは最悪だった。

でもなぁ…この間の火炙りも負けず劣らず最悪だったしなぁ…。

うん、決めた。

今度は密告者に目をつけられないようにしよう。

そう決心して、私は氷点下近い池のほとりで一度くしゃみをした。






白状せねばなるまい。

私、メグ・デッドゲイトは魔女だ。

魔女裁判で苦痛に耐え切れずに認めてしまう偽者の憐れな魔女とは違う。

本物の魔女。

数百年の長い歴史を持つ名門、デッドゲイト家の正統な後継者である。

溺死刑でも火炙りでも死ななかったのは、私が本物の魔女である何よりの証。

私はこの身に『再生』の魔術を施している。

不死身ではないものの、常人なら致命傷になる傷でも勝手に再生するのだ。

だから普通の人間に、魔女である私はまず殺せない。

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