魔女の瞳
「メグさん!!」

エリスが瞳いっぱいに涙を浮かべ、私に抱きついた。

私もエリスを抱きしめた。

…左腕だけで。

右腕は肩から先がなくなり、出血している。

「ごめんなさい!ごめんなさいメグさん!私の…私のせいで!!」

私の胸に顔をうずめ、エリスは泣きじゃくる。

「いいのよ…私は『再生』の魔術で腕なんて二、三日もあれば元に戻るんだから」

「でも!でも!!」

自分の軽率な行動で、己ではなく他人が傷を負った。

その後悔の念に押し潰されそうになり、エリスは泣き止まない。

だけど、これでいい。

この事を忘れずにいれば、エリスは二度と魔術を軽々しく使う事はないだろう。

エリスは『こちら側』に来てはいけない人間。

魔女になんてなってはいけない。

私が片腕一本でそれを教えられるのなら、安いものだ。







いつからだろう。

小間使い程度にしか見ていなかった筈のエリス。

私はそんなエリスの幸せを願っていた。

一人の女の子として、人間の女の子として、好きな人と出会い、恋をして、結婚して、可愛い子を産んで、温かな家庭を築いて…。

そんな何でもない、でも私には得る事のできない平凡な人並みの幸せを手にして欲しい。

エリスには私の思い描いた幸福を実現して欲しい。

そんな風に思っていた。


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