retaliation ~天の邪鬼な絆~
学校から帰ると母が出迎えた。

「直くん、お帰りなさい。おやつあるから一緒に…」

「いらない。」

直哉は、2階の自室に上がった。直哉は、母が嫌いだった。直哉の父は、貿易関係の会社に務めていて今はマカオに単身赴任している。会えるのは正月と夏休みの二度だった。よって母は、二人の息子を母子家庭状態で育てていた。
直哉には大学生の兄がいた。兄は、名門の私立大学に通っていた。だが水柿家は、代々国立に通って来た。兄は、自分の意思を尊重し私立大学を選び家を出た。その代償が僕にまわってきた。母は、水柿家の見えない圧に苦しみ僕を国立に入れるため必死だった。息子の顔色を伺い、媚を売る。

「俺の気持ちなんて考えようともしない。」

カバンをベッドに投げ捨てた。そしてベッドに雪崩れ込んだ。体がダルかった。

ピピピ…。

ケータイが、鳴った。メールだった。だが差出人が分からない。直哉は、体を起こした。文面にはこうあった。

水柿直哉様
 おめでとうございます。あなたは、見事秘密結社『天の邪鬼』のメンバーに選ばれました。あなた様の溢れんばかりの才能を発揮する時です。ご興味がありましたら是非とも以下の場所、指定の時刻にいらしてください。

場所:小料理屋『藤屋』

日時:7月26日 15時

女たちによって傷つけられた男たちを一緒に救いましょう。女が弱い時代は終わったのです。       
           天の邪鬼 会長


 「何だ、これ?」

直哉は、いつものように“消去”に指を伸ばした。だがふと最後の文章が頭をよぎった。
 
…女が弱い時代は終わった。

そしてもう一度メールを読み返してみた。普通のダイレクトメールならば振り込みなどを要求してくるはずである。

「もしかして直接会うタイプの詐欺なんじゃ…。」

だが指定先に小料理屋を選ぶだろうか?あまりにもダサい。ダサすぎる。

「何なんだ?この不思議なメールはっ!」

イラッとした。でも何か興味がそそられてならなかった。

…まぁ、26日は夏休み入ってるし暇だな。変な宗教の勧誘ならすぐ断って帰ろう。

下で母が呼んでいる。夕食が出来たのであろう。直哉は、ケータイを机に置き自室を後にした。
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