retaliation ~天の邪鬼な絆~
夕食の時間になり母の呼ぶ声がした。キッチンに行きテーブルの自席に着いた。

「あのね、今日はハンバーグ作ってみたの。直くん好きだよね?」

「…。」

「あの…そう言えば期末テスト始まったのよね?直くんは、大丈夫だと思うけど評定って高校1年から厳しくなるのよね?でも国立は、実力も…。」

「ごちそうさま。」

「直…」

キッチンから階段へとつながる廊下のドアを勢い良く閉めた。

お前のために大学に行くのかよ!お前の姑や近所への体裁のために大学に行くのかよ!俺は…。

イライラする気持ちと何処かで母に罪悪感を感じる自分に余計イライラした。部屋に戻りベッドにたおれこんだ。目を閉じると暗闇が広がった。どっと疲れが出て来るのがわかった。

2日目、3日目とテスト週間は直ぐに過ぎて行った。光陰矢のごとしとは良く言ったものである。あっと言う間に最終日となった。いつものごとく得意の数学は100点だった。他の教科も90点の前後を行くものばかりであった。

まあ、当たり前だよな。

直哉は、小さく呟いた。別に100点をとったからどうって訳でもない。親に褒めて欲しい訳でもない。ただ…虚しかった。

何を俺は頑張っているんだ?

直哉は、テスト用紙を小さく折り畳みカバンに入れた。カバンのポケットには大量の紙が入っている。いつのテストの物か分からない。自分では開かずのチャックと呼んでいる。誰にも見せる事のないテストの末路はここに入ることだった。

下校時間になり門をくぐった。途中には小さな公園がある。直哉が前を通ると独りの青年がブランコに座っていた。頭は、ボサボサ。服はジャージ。そしてダサい眼鏡を掛けていた。多分、自分と同い年だろうが童顔なため若く見える。

なんだ、あいつ?

青年は、空を見上げていた。だが生気が感じられなかった。気味が悪いと直哉は、足早にその場を去った。

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