花の名は、ダリア
孫を捜した時と同じように近所中を見て回ったが、その人の姿はどこにもなかった。
そう、ソージは消えた。
離れの庭に、大量の血痕を残して。
あの男は誇り高き狼だから、死に様を晒すことを良しとしなかったのだろうと、彼を知る者は口を揃えた。
つまりソージは、一人きりで死を迎える場所を探して出奔したのだと。
だがバーサンだけは、そんなはずはないと思っていた。
いや、そんなはずはないと確信していた。
だって孫が言ったのだ。
『自分をバケモノだと主張するとってもキレイなおねえさんと、自分をおにいさんだと主張する血を吐き散らかすゾンビさんが、本物のバケモノから私たちみんなを助けてくれたの』
…
コレ、絶対ェあの男だろ。
『血を吐き散らかすゾンビさん』
なんて、あの男以外いねェだろ。
どんな経緯でこの結果に至ったのかはサッパリわからないが、孫を救ったのはソージだ。
あんなに痩せ衰えた身体で。
吐血しながらも。
ソージは孫を救うために、この離れを出たのだ。
なのに、廃寺で彼の姿は見つからなかった。
官軍が森を捜索した時も、彼の姿は見つからなかった。
死んで動かなくなったソージを、誰も見つけることが出来なかった。
ソレが意味することとは…