花の名は、ダリア

確かに、血生臭く猟奇的な事件だ。
正常な人間の仕業とは考え難い。

けれど…


「『イーストエンドの切り裂き魔』が『穢れし者』だとは、俺には思えませんけどねェ…」


ソージは慣れないタイに指をかけ、少し緩めながら首を捻った。

だってそーだろ?

『穢れし者』って、要するにゾンビだろ?
アウアウ言いながら、がむしゃらに襲ってくるアレだろ?

わざわざ女を選んで、解剖手術をするほどの知能はないはずだ。

だがダリアは、頬にエクボを作って『うふふ』と笑う。


「ソージの言う通りね。
でも、きっと無関係じゃない。
刑事の勘よ。」


「…
いつから刑事になったンです?」


愛らしい笑みにつられて、ソージも笑う。

あぁ…

何度見ても魅せられる。

そのエクボに触れさせて?
その髪に、その肌に、貴方の全てに触れさせて?

そうだ。
今すぐ宿に向かおう。

切り裂き魔も、娼婦コスプレも、刑事の勘も後回しにして、今すぐ。

向かって。
触れて。

抱いて…

ソージは熱情を乗せた指を伸ばし、エクボが浮かぶダリアの頬に…

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