花の名は、ダリア
「あ… ありがと…」
反射的に手を出そうとした女は…
ダリアがはめているレザーのドレスグローブを見て。
それから身を屈めるダリアを見て、口を開けて数秒間固まって…
「とんでもありません、ミス!
お手が汚れてしまいます!」
慌てて手を引っ込め、勢いよくピョコンと立ち上がった。
「申し訳ありませんでした!
急いでいたもので…
あの… あの… おケガは…
申し訳ありませんでした、申し訳ありませんでした、申し訳ありませんでした─────!!」
…
声デカすぎ。
頭下げすぎ。
ちなみにケガをしている可能性があるのは、吹っ飛んで転がったおまえだよ。
あまりにもブンブン頭を下げすぎて、栗色の髪が乱れて香る。
ダリアは眉をひそめた。
「アナタ…
血の匂いがするわ。」
「あぁっ!!??
申し訳ありません!
臭くて申し訳ありませんー!!」
女はズザザと後退り、一際大きく頭を下げる。
「食肉工場で働いているもので…
お目障りでしょうし、すぐに消えます。
今すぐ消えます。
本当に申し訳ありませ…」