花の名は、ダリア
「ちょっと待った。」
腰を曲げたままジリジリと距離を取ってフェードアウトしようとする女の手首を、ソージが素早く捕まえた。
「おまえ、名前は?」
「ぁゎゎ…
クララと申します、ミスター。」
「ふーん…
聖乙女ってか。」
「あの… 私、お金なんて…
は!?
まさか身体でのお詫びをご所望で!?」
んなワケあるかよ、クソが。
女は間に合っとるわ。
てか、ダリアしかいらねェわ。
ソージは、青ざめて震えるクララと名乗った女の手首を捕まえたまま、ダリアを振り返った。
「俺、今回は食肉工場でバイトします。」
「えー…
ベーカリーじゃないの?
パン作りはソージの天職じゃない。」
「肉を斬るのも天職ですよ。
というコトで、おまえ。
職場を紹介しろ。」
「え…
えええぇぇぇぇぇ!!??」
クララはさらに青ざめて絶叫した。
ソージは顔を顰めて耳を塞いだ。
ダリアは…
二人を交互に見つめた後、月のない濁った夜空を仰いだ。