花の名は、ダリア
「ナニ?
仕事ないワケ?
それとも、おまえじゃ雇ってもらえねェだろってワケか?」
「と…とんでもございません、ミスター!」
眉間に皺を刻んで冷たい目で見下ろすソージに、クララは慌てて首を左右に振った。
「今は繁忙期で工場は夜でも動いておりますし、従業員の出入りが激しくて随時求人中です。
仕事がないなんてことはございません。
でも…」
「『でも』、ナニ?」
「…
ミスターのような高貴な方がこんな場所で…」
クララはソージから目を逸らして俯き、気まずそうにモゴモゴと呟いた。
あー…
なるほど。
昨夜の様子と服装で、クララは盛大に勘違いしているようだ。
「ナニソレ、ウケる。
確かにダリアは正真正銘本物の『高貴』だケド、俺はそんなんじゃねェし。」
ポニーテールにした黒髪を揺らして、ソージは苦笑する。
「だから、『ミスター』とかやめて。
俺はソージだ。」
再び視線を上げたクララは、ソージの気さくな笑顔に目を丸くして、言葉もなくコクコク頷いた。