花の名は、ダリア
自分から問いかけたクセに気のない返事をしたソージは、ゆっくりと工場内を見回した。
確かにいるね、女。
紳士とは言い難いガチムチ男たちに混じって、ちょいちょいラインに入ってるね。
でも…
オバチャンですよネ?
そりゃそーだ。
このご時世、若いイギリス女性の仕事といえばメイドが主流。
夜間に食肉工場なんかで働くのは、不甲斐ない旦那に代わって家計を支えている既婚女性がほとんどだろう。
掃き溜めに鶴… おっと、失礼。
そんな色気のない職場に、クララのような若い女が一人いると、揉め事が起こるのは必然ってワケで。
「おい、クララ。
新しい男かぁ?」
仕事中だというのに酒の臭いをプンプンさせたゴツい男が、見るからにモブっぽいヤロー共を引き連れて近づいてきた。
男たちはニヤニヤ笑いながら、あっという間にソージとクララを取り囲む。
「ケビンはどうしたよ?
最近見ねぇじゃねぇか。
オメェんトコに入り浸りか?」
先頭にいたゴツい男が手を伸ばし、無遠慮にクララの顎を掴んだ。
「知りません!
放して下さい!」
その手を振りほどこうと、クララは懸命にもがくが…