花の名は、ダリア
そんなバカげた…
いやいや、愛に満ち溢れた会話を交わして、ソージは今夜も安宿の一室を出た。
静かな夜だ。
酔っぱらいに絡まれたり、客引きの女にしがみつかれて胸を押し付けられたりするものの、この街では当たり前の静かな夜だ。
そして、平和な夜だ。
ソージとダリアがこの街に着いて、かれこれ10日。
噂の切り裂き魔サンは、どうやら活動停止中のようだ。
娼婦コスプレでおびき寄せる作戦は却下になったので、次の犯行が行われなければ、追うべき手懸かりも見つけられない。
そんなワケで、ソージとダリアも穏やかで平和な日々を送っていた。
ソージは毎日、宿と職場を往復して。
ダリアは毎日、宿でソージの帰りを待って。
…
って…
ナニコレ?夫婦?
もう、いっそ宿なんか引き払っちゃう?
でもって小洒落たフラットでも借りちゃう?
そして、そして…
(腰を据えて、甘い新婚生活始めちゃったりしてェェェェェ!?)
などと、ソージの妄想が爆発していたりするワケだが。
不毛だよ、うん。