花の名は、ダリア

と、まぁ色々ありつつも、本日も順調にバイトは終了。

『ソージさん!お疲れっシター!』
なんて体育会系の挨拶を聞き流しつつ、速やかに職場を退場。

そしていつものように、クララの家までの暗い道のりを二人並んで歩いていく。

彼女の家は、三階建てのテラスハウスだ。

一人暮らしには広すぎンだろ。
家賃もバカになンねぇだろ。

以前ソージがそんな疑問を口にすると、クララは笑って言った。

『スゴく古い建物なンです
ヘタにフラットを借りるより、よっぽど安上がりなンですよ』

なるほど。

確かに見た目、廃墟と間違われそうな年代物だ。
入居者も少ないようで、明かりが灯っていない部屋も目立つ。

そんな、取り壊しも近いと思われるボロ家の前で、今夜もクララはペコリと頭を下げた。


「本当にスミマセン。
毎晩毎晩、送っていただいて。」


「別に。」


ステッキをクルリと回しながら、ソージは素っ気なく答える。

毎晩繰り返されている会話だ。

それから、こう続く。


「あの…
今夜は是非、寄っていらして?
お茶でもご馳走させて下さい。」


「なんのために?」


「なんのためって…
お礼とか…」

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